釧新コラム ワッハ 歯!

〜健口100年時代〜 釧新コラム04
「スポーツデンティスト」

 
 「スポーツデンティスト」というのを知っていますか。
 歯科の分野の中にスポーツ歯科医学というものがあり、「歯科医学領域からスポーツを支援する科学と技術」とされています。
 スポーツデンティストは、スポーツ歯科医学の研究、教育、普及活動を行い、日本スポーツ協会と日本歯科医師会から公認されたライセンスを保有し、各種競技の場で活動しています。
 スポーツ歯科医学の目標は
 1.スポーツによる国民の健康・安全づくりを支援する歯科医学的配慮
   生涯スポーツをおこないやすくするための支援、健康寿命の延伸のための支援、転
   倒予防のための支援などがあげられる。
 2.顎顔面領域でのスポーツ外傷を予防するためのサポート
   口腔外傷による歯の喪失はQOLの低下などを引き起こし生涯にわたる健康の保持
   増進に影響を与えます。特に学童期の口腔外傷は長期間にわたり問題となることも
   あるので十分な注意と配慮が必要である。
   主体管理ではマウスガードの使用が推奨されるがまだまだ普及が進んでいないのが
   現状である。
 3.スポーツ競技力の維持・向上を支援するための歯科医学的配慮
   スポーツ競技力は心技体のバランスの上に成り立つものであるので歯、口腔の管理
   だけで左右されるものではないが、咬み合わせの変化によって、筋力が変化したり、
   身体動揺が変化することは知られているので歯、口腔の健康な状態を確保しておく
   ことは基本であると思われる。
 
 実際に競技会場で救急要員として臨場した時の事例を紹介します。
 2019年に釧路市で行われた第74回冬季国体のアイスホッケーの試合会場で、試合中に選手の顔にパックが当たり前歯が1本脱臼してしまいました。
 インターバル中に処置要請があり、ベンチサイドでスポーツデンティスト2人で止血処置、歯牙の整復固定をしました。その後に本人の希望で試合に出場した、という事例です。
 選手はマウスガードを装着していましたが、脱臼してしまいました。
 しかし、マウスガードのおかげで口腔内の裂傷も少なく、歯牙の喪失に至らなかったと思われます。
 マウスガードは外傷の予防、軽減にとても有効なアイテムです。
 今では、アイスホッケー以外にも野球、バスケットボール、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボール、ボクシング、空手等の競技でも使用されていますが、コンタクトスポーツだけではなく色々なスポーツに普及してもらいたいと思っています。
 これからも、スポーツを通じて皆さんの健康増進や、スポーツ競技力の向上、スポーツ外傷の予防のために歯科の分野から手助けができればと考えています。
 

(釧路歯科医師会 理事 三本 和宏)