釧新コラム ワッハ 歯!

〜健口100年時代〜 釧新コラム06
「歯磨きをしていてもむし歯がすぐできてしまうのはなぜ?」

 (日頃患者さんから「歯磨きしてるんだけどすぐむし歯ができるんだよね。歯医者にきて治療して、歯磨きをちゃんとしてるんだけどなあ」というお話しをよくききます。これってどういうことなのでしょうか?
 むし歯のできる原因は砂糖を材料にして、ストレプトコッカス・ミュータンスというむし歯菌が酸を作り、その酸によって歯が溶けてむし歯ができてしまいます。その成因には、4つの要素が関係しています。Newbrunの4つの輪という図がありますが、①むし歯菌の数 ②砂糖 ③歯質 ④時間の4つの要素でむし歯ができます。
 また、ステファン曲線と言って糖分を摂取すると臨界pH5.5(歯が溶け始めるpH)を超えて一気にお口の中が酸性になり、唾液の緩衝能(酸性を中性にする作用)によって40分かかってようやくもとの歯が溶けないpHにお口の中が戻ります。この糖分摂取の時間的要素が、歯磨きをしても、歯医者に行って治療をしてもすぐむし歯になってしまう原因の大半を占めていると思われます。もっと解りやすく言うと、あめ、ガム、キャラメル、グミ、ソフトキャンディなど、一度お口の中に入れるとなかなか溶けず長い時間糖分がお口の中にとどまるおやつや、糖分が多量に入っている飲み物やおやつを回数多く摂取する習慣があると、お口の中が酸性になって臨界pHより低いpHの状態が長く続きます。この状態が続くと、歯磨きしていたとしても必ずむし歯菌はお口の中に残っているので歯が溶けてむし歯になってしまいます。治療した歯に関しても治療した詰め物の部分は溶けませんが、残っている自分の歯質は溶けてむし歯になってしまいます。
 子供たちが頻繁に糖分の多いおやつやジュースを摂ることはもとより、禁煙中の方で口さみしさにあめをなめていたり、仕事中にガムをずっと噛む習慣がある方は歯磨きをしていてもむし歯になる傾向が高いようです。
 おやつを食べるのが悪いわけではなく、おやつの回数を減らしたり、時間を決めておやつを食べたり、お茶や牛乳など甘い飲み物ではない飲み物と一緒におやつを食べる。食後はなるべく早くうがいや歯磨きをして糖分がお口に残らないようにする。他にもむし歯予防の方法やむし歯の原因はありますが、生活習慣の中に原因がある場合が結構ありますので、かかりつけの歯医者さんに相談していただき、その人その人(個人)に合った予防方法が必要です。

(釧路歯科医師会 理事 藤本 正幸)