釧新コラム 釧根けんこう新時代   

ワッハッ歯ッ!健口100年時代② 

歯科インプラント治療の歴史と現在

歯を失った際の歯科治療は、今まで入れ歯やブリッジが、主な治療法でした。
 しかし現在は、第3の治療法として歯科インプラントが広く用いられるようになっています。インプラントとは、人工の材料や装置を体に入れることの総称です。
 歯科では、歯を失った部分のあごの骨に、体になじみやすい材料(チタン)で作られたインプラント(土台)を埋め込み、そこにセラミックや金属などで作った冠を取り付けるものです。(図1)
 インプラント治療の歴史は思いのほか古く、その起源は紀元前にまでさかのぼります。
 インカ文明やエジプト文明時代の人骨に、歯の代用として象牙や宝石を埋められたものが発見されました。それらのなかには、埋葬された人物が来世で不自由なく噛めることを願って、死後埋め込まれた儀式のようなものもあったかもしれません。しかし、20世紀になってから発見されたマヤ族の女性の下顎の骨には、貝殻を精巧に加工した歯が埋め込まれていましたが、レントゲン検査を行った結果、埋め込まれた貝殻でできた歯は骨と一体の構造になっており、周囲の骨がしっかりと治っていたことが解明されました。しかもその歯の周囲には歯石がついていたことから、生前に埋め込まれたものだと証明されました。これらのことから歯科インプラント治療はかなり以前から存在していたことがうかがえます。時代は違えど、人が歯を使ってものを食べたいという欲求は変わっていないのかもしれません。
 その後歯科インプラントは、1952年にスウェーデン人医師のブローネマルク教授がチタンと骨が結合することを偶然発見し、実用化され世界に普及しました。そのインプラントが現在の基礎となりました。その後1990年代に入ると、インプラント治療をおこなう歯科医院が増加し、2000年前後には歯科大学病院においてもインプラント科が設置されるなど、インプラント治療は広まっていきました。
 現在のインプラント治療の進歩は目覚ましく、口腔内を専用のカメラでスキャンして、そのデータとCTのデータをもとに患者さんの口の中をコンピューターで再現することが可能になってきています。そのデータを参考に手術時に使用するサージカルガイド(と呼ばれる器具:などサージカルガイドについて一言説明があった方が良いと思います)を作製します。これにより0.1mm単位の正確な手術が可能になり、安心で安全なインプラント治療が一般的になりつつあります。(図2 3)
 今後も歯科界が発展していくとともに、先人が築いたインプラント治療は一層発展していくことでしょう。

(釧路歯科医師会 理事 上田 耕平)